SPI REPORT
多くの定量的および定性的な情報を処理・分析し、いくつかのフォーマットを利用することにより解釈と洞察を深め、アイデアを創出させることをここまで4回の記事でご案内してきました。
Symphonyからもたらされる5W2Hは、ビジネスに対する説明責任とさらなる創造性をサポートするコミュニケーションブリーフとして、クリエイティブ開発およびメディアプランニングに繋がっていくものです。
この最終回では、ここまでのプロセスを包括するアウトプットを2つご説明して、結びとしたいと思います。
Synopsis
マーケティング・コミュニケーション活動は、過去の実績や経験、効果仮説などを踏まえ、複雑に編みあがっていくものです。多岐にわたるコンタクトポイントや訴求するべきブランドの様々な属性、また消費者の態度変容・行動プロセスを考慮すると、戦略概要の俯瞰図を記述することが重要となります。これは因果を確認/仮定することで、各活動の目的性と連関を明らかにするとともに、マーケティング活動に関わるステークホルダー間での戦略に対するコンセンサス醸成や、実施案に対する評価にも役立つからです。
エスピーアイが用意しているフォーマット:Synopsisでは、いくつかの記載ルールを設定することにより、目標(KPI)管理と戦略シナリオを一望できるようにしています。
例えば上記のように記載項目をいくつかのグループに分け、最終的なゴールであるセールス目標達成のためのルートを明らかにすることにより、個別活動の役割や目標、重要性などを認識することができます。これらはキャンペーンの事後検証のチェックポイントとしても使用することができ、何が(どこまでが)機能して、どこが事前の予測とは異なったのか、に焦点を当てることが可能となります。
また上図の例では破線を利用していますが、「現在は仮説である」状況を明示することにより、今後のリサーチ/検証課題が浮き彫りになります。戦略開発時にこれらを強く意識することにより、各活動が「やりっぱなし」になることを避けるのと同時に、「アイデア/期待仮説などに立脚した過去にとらわれない活動」をサポートする目的も含まれています。
5W2H
そして最終的な戦略サマリーとして用意するのが5W2Hマトリクスです。これまでのプロセスを鑑みる形で、各戦略要素、要素間の繋がり、創造可能性と説明責任を考慮しながら記載していくものです。これまでの中間フォーマットを参照し、シナリオ取捨選択の判断材料として用いながら、グループワークとしてまとめていくのも効果的です。
また以前にも記したとおり5W2Hシナリオは一つとは限りません。むしろ複雑化するマーケティング・コミュニケーションでは、一つでは不充分であるとさえ考えられます。
メイン戦略を明確にしながらも、複数の補完シナリオを併載するところに『Symphony』(交響曲)の含意があります。
ネクストステップ/戦略シェアの重要性
個別メディアプラン、クリエイティブ開発の前に、統一的なブリーフ(戦略)がシェアできるということは、コミュニケーションの相乗効果に繋がるものです。
ここで示されたひとつのシナリオが実施段階ではさらに細分化されたメディア展開案や複数のクリエイティブ案となることもあるでしょう。それらがすべて同じ5W2Hの枠組みから派生しているものであれば、一貫した戦略を保ちつつ効果性の高いアウトプットである、と考えられます。
ここまで5回に渡り、エスピーアイの戦略策定プロセス:Symphonyをご説明してきましたが、論理とアイデア、左脳と右脳のバランスを考え有効な戦略を導き出すステップを部分的にでもご理解頂けていれば幸いです。これらはもちろん個々のクライアント事情に合わせてカスタマイズするプロセスで、全ての作業を網羅的に行うとは限りません。また既に現状使用している戦略立案作業の中での補完的な役割を担うこともできるかと考えています。
エスピーアイはこれまで先進的な分析とコンサルテーションにより、多くの広告主のROI改善に貢献してきたと自負しております。今後はさらにこのSymphonyプロセス、客観的な立場からのプロジェクト・ファシリテーションなどを通して、ブランド/消費者/有効なコミュニケーション機会に対する洞察を深め、さらなるビジネス成長のお手伝いをさせていただく所存です。
今後もこれらのケーススタディは随時更新していく予定です。本稿に関してのご質問やご相談などありましたら、ご遠慮なくお申し付けください。
文責:小澤 啓一/ディレクター
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