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真相究明:“TVスポット達成率”の低下理由|株式会社エスピーアイ

広告投資へのアカウンタビリティ(説明責任)が声高に叫ばれるようになった昨今、日本の広告費全体のおよそ三割強を占めるテレビCM出稿、特にその一角を担うスポット取引において、購入量と実際の露出量の間に少なからずギャップが生じている現実に、疑問を抱く関係者は少なくないのではないでしょうか。

スポット100GRP(注1)を購入したものの、広告代理店からの報告によるとCM放映後の獲得視聴率は90GRP。しかし、“10%程度の差損はよくある”らしい。このような事を耳にする機会が少なからずあります。

果たしてそれは本当でしょうか。また、その理由は明示されていますでしょうか。

もし明示されていないとすると、例えば上記の場合、年間10億円をTVスポット広告費として投入した場合、実に1億円分の損失に対して説明責任が果たせていない事となります。

このような疑問を解消すべく、基礎的な用語の解説から、事後評価方法、達成率喪失理由とその予防対策までを複数回に分けてご説明致します。

また、これらのノウハウは、弊社のサービス“TV Audit”の一部として用いられ、既に多くの広告主様からご支持を頂いております。

※以下、「視聴率」とは、CMの基本購入単位である「世帯視聴率」を意味しております。ご留意下さい。

基礎編

番組平均視聴率と時点視聴率について

番組平均視聴率とは、該当する番組について、その放送時間枠内の毎分視聴率を加算し、それを番組放送分数で除算したものです。つまり、放送時間枠内における、番組本編、提供番組CM、スポットCMの全てを含む平均視聴率となります。

一方、時点視聴率は、CMの露出時点での視聴率を意味します。現在の視聴率は基本的に分単位での取得となるため、厳密に言うと本来の露出時点とは異なる可能性がありますが、最長でも直近1分未満の視聴率となります。

広告代理店からの事後報告は、どちらの視聴率を用いて算出されているかご存知ですか。

実はこの両者の間には、広告主としては見過ごす事のできない点があります。

下図をご覧下さい。

 

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仮に番組平均視聴率を用いて算出し、報告をした場合、この番組枠に含まれている全てのタイム(注2)及びPT(注3)について、同一評価となります。(SB(注4)の評価には、番組枠終了1分前の視聴率が用いられます。)
しかし、図を見る限り、これらのCM全てが同じ評価を受ける事に、違和感を抱く方は少なくないはずです。CMの挿入位置によって、視聴している世帯数が異なるのは自明です。それぞれ然るべき評価を受ける必要があります。

タイムの場合、CM枠の中でも視聴率が高いと想定される箇所に挿入されやすく、またローテーションが基本となるため、タイム同士での格差は比較的生じにくく、番組平均視聴率にて評価する事も有用と言えるでしょう。しかし、スポットの場合、同一番組内での格差は広がりやすく、挿入位置によって有利不利が生じます。広告主の立場からは、より精密に成果把握が可能となる時点視聴率での評価が推奨されます。

購入GRP(予定GRP)について

多くの広告主は、GRPをTVスポットの購入単位としていると思われます。現在の購入形態では、購入GRPとして、実放映前に予め設定された数量に対して、その対価を払うこととなります。

さて、その購入GRPは、推定GRPとも言い換える事ができます。しかし、どのようにしてその視聴率が“推定”されているかを正確に把握している人は多くないようです。

ここでは、購入時に使用されている視聴率について解説していきます。

まず、視聴率の推定方法についてですが、推定視聴率はスポット枠一本一本について設定されています。基本的には、過去の同一時間帯における、先述した番組平均視聴率(SBは番組枠終了1分前の視聴率)が算出に用いられますが、当然、同一名の番組であったとしても、過去のどの日を基準とするのかによってその数値は変化します。そのため、基準となる日を定め、その直近4週間分について、同一時間枠の数値を平均することで誤差を減らし算出しています。

しかし、全てのスポットに基準となる日をそれぞれ決める、というのは現実的ではありません。従って、キャンペーンや月ごとに、一つの週を指定する事から始まります。その週を基準とし、該当するスポットと同じ曜日、同じ時間枠における直近4週間の平均値を各スポットの推定視聴率として設定していきます。

この時、指定した週を号数週と呼びます。号数とはその週がその年の何週目にあたるかを示す数値です。

つまり、この指定した号数が、推定視聴率の数値に大きな影響を与えます。極端な例ですが、推定値算出にサッカーワールドカップやオリンピックなどの視聴率が含まれていた場合、推定視聴率と実際の視聴率の格差が顕著に現れます。次のような枠が、顕著な例と言えるでしょう。

 

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基準となる週の指定は、予定購入量の算出に大きな影響を与えています。

次回は、この推定視聴率によって合算された購入予定GRP量と、実際に獲得したGRP量(時点視聴率基準)との間に、如何にして誤差が生じてしまったのかについて、もう少し掘り下げて解説をしてみたいと思います。

(注1) GRP:Gross Rating Pointの略。任意の期間中に出稿したCM視聴率の和の事。
(注2)タイム:提供CMとも言われ、基本的に提供表示を伴うが例外もある。
(注3) PT:Participating Announcementの略。ピーティーと呼ばれる。番組内に放送される、タイム以外のCMの事。
(注4) SB:Station Breakの略。ステブレと呼ばれる。番組と次の番組の間に放送されるスポットCM。

文責:エスピーアイ

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