SPI REPORT

『媒体態度が広告への態度におよぼす影響』日経広告研究所報(226号)

メディアとメッセージの関係を探る-
東京富士大学経営学部 広瀬 盛一
(株)エスピーアイ 朴 亨烈

こちらの論文は、『媒体態度が広告への態度に及ぼす影響;メディアとメッセージとの関係を探る』という題目で、日経広告研究所報226号(2006年4月)に掲載されたもので、東京富士大学経営学部の広瀬盛一先生との共同研究によるものです

1.はじめに
 本研究の目的は、媒体への態度と広告への態度との関係を探ることである。広告は、メッセージをメディアにのせて、消費者に到達して、はじめて効果を発揮する。つまり、メディアとメッセージは不可分である。しかし、広告研究においては、それぞれが別個の研究領域を形成しており、2つの領域にまたがるような理論の構築に焦点が当たることはほとんどなかった。
 楠本(2001)が指摘しているように、媒体研究には「ターゲットありき、メッセージありき」という前提に立ってきた。そのため、リーチをいかに効率よく確保するかに焦点が当てられてきた。しかし、インターネットをはじめとする新しい広告媒体の開発、テレビやラジオのデジタル化と多チャンネル化といっためまぐるしい環境変化の中で効果的な媒体計画を行うためには、これまで以上にオーディエンスと媒体との関係を理解する必要がある。
 また、媒体計画はブランドとの関係でも議論されるようになっている。たとえば、Keller(1993)らの主張に見られる顧客ベースのブランド・エクイティの中核的な概念である認知や連想は、顧客の置かれた状況によって変化する。オーディエンスの状況に合わせた媒体計画のための概念としては、Schulz and Barnes(1999)が関連性(Relevancy)と受容性(Receptivity)を示している。これは、ブランドのメッセージを効果的に伝えるためには、オーディエンスに関連した媒体を、オーディエンスがメッセージを受け取りやすい状況で提供するということである。関連性や受容性を考えるためには、オーディエンス視点の媒体評価が重要となる。
 これらのことからも媒体についての質的な側面への注目しつつ、メッセージとの親和性を考えた理論構築の必要性が確認できる。そこで本研究では、広告研究でもっとも盛んに研究が行われてきた態度に焦点を当て、メディアとメッセージの関係を探ることにした。特に、媒体への態度構造を明らかにするとともに、媒体への態度、広告全般への態度(AG: Attitude toward an ad in general)、広告表現への態度(Aad: Attitude toward the ad)との関係を明らかにすることにした。

2.先行研究のレビュー
 広告に関わる態度は購買行動の先行要因として、これまでに多くの研究がなされてきたが、媒体への態度、広告全般への態度(AG)、広告表現への態度(Aad)に大別できる。ここでは、それぞれの領域における態度の構成要素、媒体との関わりについて焦点を当ててみていくことにする。
(1)媒体への態度
 媒体に関する態度は、広告研究とマス・コミュニケーション研究という2つの領域にまたがっている。さらに、媒体への態度は、媒体そのものへの態度と媒体に出稿された広告への態度にわけて考えることができる。Aad研究の中にも特定の媒体を取り上げ、媒体の特性について触れているものがある。一般に、媒体への研究では、利用と満足の理論を用いた研究が多い。情報源としての媒体に期待することと、それに対する使用経験との関係を考えている。
 たとえば、Kippax, and Murray (1980)は、満足の概念を用いて媒体を分類している。彼らによれば、媒体はコンテンツだけでなくアクセサビリティと利用可能性に基づいて分類されている。Lichtenstein and Rosenfeld (1983)は、媒体・イメージによって7つの媒体を対象に調査を行っている。マスコミ媒体は、似たようなイメージを持っており、ラジオとテレビ、雑誌と新聞が、それぞれ類似したイメージであることが明らかにされている。
 媒体への態度についてはDobos and Dimmick (1988)が、サーベイとレビューを通じて、5つの要因を明らかにしている。5つの要因とは、(1)観察:自分の住んでいる国や地域の情報を知ることができる、(2)知識:ニュースが身の回りの重要な情報を詳細に提供してくれる、(3)息抜き/気晴らし:ニュースは暇をつぶしたり、日常生活以外のことを考えさせてくれたりする、(4)刺激:ニュースはドラマチックで、エンタテインメント性がある、(5)個人を超えた効用:周りの人との間で話題になったり、他人に影響を与えられるような事実を教えてくれる、である。
 また、Schlosser, Shavitt, and Kanfer (1999)は、インターネット広告への態度を探り、広告の功利性(advertising utility)、侮辱(indignity)、信頼(trust)、価格感度(price perceptions)、規制(regulation)といった要因を挙げている。Holbert and Stephenson (2003)が指摘しているように、マス・コミュニケーション研究では、態度を構造的にとらえた研究が少なく、興味深い成果といえよう。
 媒体への態度は、利用と満足の理論に基づいているため、Aad研究とは異なり、情報源である媒体への具体的なニーズによって評価されている。その一方で、調査の手法については、画一的で時限も単純だという指摘がある(Dobos and Dimmick 1988; Holbert and Stephenson 2003)。Swanson(1987)も、媒体への満足度は、媒体メッセージの解釈と関係しており、媒体への満足度を構造的に考えるべきだと主張している。
(2)広告全般への態度
 AGとは「広告」という言葉を、「対象にした先有傾向」と定義できる。ここで言う広告には、広告主の活動や広告という仕組みなどが含まれている。広告が批判を受けたとき、その批判が広告主に向けられたものなのか、広告という仕組みに向けられたものなのかによって、批判の矛先は変わってくるはずである。しかし、消費者教育や広告教育が十分でなければ、個別の広告主への批判であっても広告全般への批判になってしまうこともある。したがって、AG は広告活動の前提として注目すべき概念といえる。
 AG 研究における態度は、主に広告を社会的側面と経済的側面の両面から考えている。Sandage and Leckenby (1980) のように、広告への態度を好意に絞りSD 法によって探る場合もあるが、多くの研究ではいくつかの評価項目から構成されている。
 たとえば、Barksdale and Darden (1972) の研究では、企業の哲学、商品の品質、広告、他のマーケティングの活動、消費者の責任、消費者主義、政府の規制という側面から評価している。また、Larkin (1977) の研究は、広告への態度を、広告の経済的な影響、広告の社会的な影響、広告の倫理、広告の規制の4つにまとめている。AG の研究では、広告のネガティブな側面にも焦点が当てられることが多い。Reid and Soley (1982) の研究では、広告への態度を社会的な影響と経済的な影響に分けている。社会的な影響では、広告は人を馬鹿にしている、欲しくない商品を買わせる、人を騙すといった項目が挙げられている。一方、経済的な影響では、広告はより安い価格をもたらす、より品質の高い商品を促進する、生活水準を高めるといった項目が挙げられている。 Shavitt, Lowrey, and Haefner (1998)の研究は、Aad にも関連した研究である。広告全般への態度、楽しみや侮辱、広告内容の信頼性、広告内容の有用性、製品価格や製品価値に広告が与える影響、規制などを挙げており、広告表現にも踏み込んだ研究をしている。
 このような先行研究の成果から、AG の態度は全般的な態度をあわせると大きく6つの要素にまとめることができる(広瀬、朴、Sobrin 2005)。(1)広告の有用性:広告の存在が社会的に見て有益あるいは有害なのかどうか。広告は社会に悪影響を与えているのではないか。(2)広告と経済:消費者に有益な情報を与え、競争を促進することで消費者に低価格で高品質を提供しているか、その結果として経済水準を高めているかどうか。(3)広告の倫理:広告を見るのが好き/嫌い、楽しい/苦痛と感じるかどうか。広告は消費者を馬鹿にしていると思うかどうか。セックスや暴力が気になるかどうか。(4)広告の信頼性:広告を信頼できるかどうか。購買決定の時にどれだけ参考にできるか。広告は消費者をミスリードしているかどうか。(5)広告の規制:広告の規制を強化すべきか、緩和すべきか。有害・危険な製品の広告を禁止すべきか。(6)全般的な態度:広告に対して肯定的か、否定的かである。
(3)広告表現への態度
 Lutz(1985)によれば、広告への態度(以下Aadと略す)とは、広告のオーディエンスが「特定の広告との接触状況において、好意的あるいは非好意的にその広告に反応する先有傾向」と定義できる。先に挙げたAGとAadとの最も大きな違いは、Aadが特定の広告を対象にしているのに対して、AGは広告全般を対象にしているという点である。つまり、Aadは主として広告表現を取り上げているが、AGは広告という仕組みや個別の広告活動という幅広い範囲を扱っている点が大きく異なる。
 Aadは、広告コミュニケーションの情報処理過程の中で、様々な要因との関係が想定されている。多くのモデルでは、Aadは広告認知とブランド態度を媒介する変数として説明されているが、その過程は様々である。Aadを媒介変数として捉える研究の成果からわかったことは、Aadを高めることができれば、より高いブランド態度や購買意図に結びつき、高い広告効果が期待できるということである。Aadが購買行動において重要な役割を果たすのであれば、Aadがどのように形成されているのかも重要な課題となる。MacKenzie and Lutz (1989)は、Aadを形成する要因を挙げ、Aadとの関係をまとめている(図表1)。
Aadを形成する要因として最も注目されているのは感情で、MacKenzie and Lutz (1989)らのモデルでは、気分(mood)とされている。彼らのモデルでは、Aadの先行要因として広告の信頼性、広告の知覚、広告主への態度、広告全般への態度、気分の5つを挙げている。また、これらの要因のうち、広告の信頼性と広告の知覚は中心的ルートで、広告主への態度、広告全般への態度、気分は周辺的ルートで処理されるとしている。態度への影響要因としては、認知的反応を中心に考えられてきたが、情緒的な反応を組み込んで考える研究が行われるようになった。Holbrook and Batra (1987)は、感情に関す

 

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る様々な項目でAadの測定を試みている。その結果、快感(誇り、愛情、感謝、楽しみ)、覚醒(興味、活気、驚き、関与)、抑制(無力感、悲しみ、恐れ、嫌気)といった3つの要因が、Aadに影響を与えていることが明らかになった。Edell and Burke (1987)もAadを情緒的反応によって説明している。彼らは、明るい気分(upbeat)として32の尺度、否定的な気分(negative)として20の尺度、温かい気分(warmth)として13の尺度を示している。
 認知的反応と情緒的反応とを区別するかどうかも議論されている。Aadを、好きか嫌いかといった単純な構造で考えるのではなく、認知的な要素と情緒的な要素から考えるべきという主張が見られるようになった(Shrimp 1981; Brown, Homer, and Inman 1998)。その結果、Aadは好きとか嫌いといった単純な評価ではなく、幅広い角度から捉えられるようになってきた。
 情緒的要因は、ほとんどすべてのAad研究で議論されている。これまで見てきたように、気分(mood)、感情(emotion)、情動(affect)といった情緒的要因は、Aadを形成する重要な要因として考えられている。 Madden, Allen, Twible (1988)は、認知的な評価と情緒的な評価は別のものであるという考えをしており、認知的な評価に加えて、ポジティブな感情、ネガティブな感情、SD法を用いた広告の評価といった情緒的な評価を用いてAadを説明している。認知的な評価と情緒的な評価を、Aadの構造においてまったく別のものとするのか、Aadのサブセットとするのかは、選択するモデルや研究者の視点によって異なっている。
 先に述べたように、MacKenzie and Lutz (1989)のモデル(図表1)は、Aadの先行要因として5つの要因を挙げているが、これらをAadのサブセットと見なせば、非常に幅広い態度構造と考えることもできる。彼らのモデルの中では広告全般への態度についても触れられているが、AadとAGとの関係について述べた論文は、きわめて少なかった。Aadでは、言語、視覚といった広告表現にかかわる要因が取り上げられていて、メディアに関わるような要因が取り上げられることはほとんどなかったといえる。つまり、それぞれの研究領域では、それぞれのテーマにおいて独自のアプローチ(測定方法、前提条件など)が取られていて、態度を同じ枠組みの中で捉えてこなかったのである。
 

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そこで本研究では、態度研究に見られる快楽/功利モデルを用いて媒体と広告への態度構造を明らかにした上で、媒体への態度を広告全般への態度からブランドへの態度まで拡大しようと考えた(図表2参照)。

2.広告・媒体への態度における快楽/功利モデルの展開
(1)快楽/功利(Hedonic/Utility)モデル
広告と消費者との関係を理解するためには、態度を構成する個別の要素に焦点を当てるのではなく、認知と感情や快楽と功利といった要素を、包括的かつ構造的に捉えていく必要がある。たとえば、Vakaratsas and Ambler (1999)は、広告効果モデルのレビューから、認知、感情、行動といったそれぞれに焦点を当てるのではなく、それらを包括的にとらえるべきだと主張している。また、消費研究では、それまでの情報処理モデルを補うために、エンタテインメント、余暇、快楽といった消費におけるさまざまな価値が取り込まれるようになった(Holbrook and Hirschman 1982)。快楽/功利(HED/UT)モデルは、このような観点から導き出されたフレームワークである。そこで「媒体と広告に触れること」あるいはそこから得られる情報を処理することが日常生活の中で行われる「消費」の一種だとすれば、媒体接触・広告接触という消費においても快楽的なベネフィットと功利的ベネフィットといった同様なフレームワークで考えられる。媒体と広告全般への態度においてこうした二つの構造の解明が本研究の第一段階であり、次の段階として「媒体への態度→広告への態度」の関係を解明することがある。

(2)快楽/功利尺度の開発
快楽/功利(HED/UT)尺度は、すでにいくつかの研究によって明らかにされている。たとえば、Chandon, Wansink, and Laurent (1999, 2000 ) は、セールス・プロモーションへの態度の測定に応用している。功利に関する項目は節約(金銭的節約)、品質(製品購買の質の向上)、利便性(探索と意思決定コストの削減)で、快楽に関する項目は、価値表現(自己概念と個人価値の表現と向上)、発見(刺激と多様性)、エンターテイメント(楽しみと美的価値)である。

 

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既存の研究では、SD 法による項目も多く見られるが、多様な分析に対応するため、本研究では、Chandon et. al. (1999, 2000 )とDobos and Dimmick (1988)に依拠して調査設計を行った。マス4媒体とインターネット、屋外の6つの媒体についてそれぞれの質問項目に「そう思う」から「そう思わない」までの5段階で尋ね、同様に該当媒体の広告についても尋ねた。実施概要は以下の通りである。
・ 調査期間:2004年11月-12月
・ 調査対象:首都圏の大学生
・ 回答者数:221名(男:109名、女:112名)
・ 有効回答:192名
・ 対象媒体:テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット、屋外

(3)広告全般への態度と媒体への態度の検証
各質問項目の因果関係とともに態度構造(快楽/功利の二つの構造)を確認的因子分析にて検証した上で、共分散構造分析(SPSS、Amos5.0)を用い、各項目間の影響関係を各モデルの適合性を見ながら検証した。なお、ラジオは今回の調査対象である大学生の81.3%が「ほとんど接触しない」という結果だったので他媒体とのバランスを考え対象から外した。モデル検証の第1段階(図表5)は、媒体への態度と広告全般への態度において快楽/功利(HED/UT)で説明できる構造の存在を明らかにすることである。まず媒体への態度についての分析結果を見てみると、モデル適合度の指標であるRMSEAの水準が目安の0.08を若干上回っているが、その他の数値が高いため、モデルが受容できる水準にあると判断した。

 

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*GFI : 0.966, AGFI : 0.928, CFI : 0.947, RMSEA : 0.087, AIC : 188.287
**カイ二乗 : 78.802, 自由度 : 18,
***係数はすべて、5%水準で有意

媒体への態度において、「世の中の出来事」「タイムリーな情報」「仕事・生活に役立つ情報」といった情報や知識を獲得するということは、その媒体が持つ機能的ベネフィットを求める接触形態で、媒体に対し功利的態度を形成する。一方、「暇つぶし」「なんとなく」「流行の先取り」「エンタテインメント」など媒体接触自体を楽しむことは快楽的態度を形成し、二つの態度が明確に分かれて存在することが分かった。ここでさらに先行研究と「モデル1」の誤差間の相関関係を手がかりに功利的態度を「世の中の出来事」「タイムリーな情報」などは「観察」で、「仕事・生活に役立つ情報」などは「知識」に、快楽的態度の「暇つぶし」「なんとなく」を「「気晴らし・息抜き」、「流行の先取り」「エンタテインメント」を「刺激」にそれぞれ分けて、モデル1の観測変数と潜在変数の間に新たに潜在変数を設け2次因子のモデル構築したのがモデル2である。こちらのモデルもRMSEAの水準が目安と言われる0.08を上回ってはいるが、その他の適合度の数値が十分受容できる水準といえる。このモデル解釈が媒体における態度の構造をより明確に表しているため、モデル2を受容した。このモデルにより功利的態度の中でも得られる情報の内容によって消費者は「観察」や「知識」といった観点から媒体接触を行っていることが明らかになった。
快楽的態度においても「気晴らし・生き抜き」ができる手段として媒体を接触したり、「流行の先取り」と「エンタテインメント」のような「刺激」を求めて接したりしていることが分かった。

 

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*GFI : 0.944, AGFI : 0.873, CFI : 0.895, RMSEA : 0.123, AIC : 309.839
**カイ二乗 : 269.839, 自由度 : 16
***係数はすべて、5%水準で有意

また、「生活に役立つ情報」の項目は、仮説段階の確認的因子分析の際、功利的態度と快楽的態度のどちらでも捉えられる数値が確認されたが、モデル検証の段階では功利的態度の項目として確認された。これは、生活・趣味などの情報は情報自体が持つ功利的なベネフィットを評価・イメージする態度形成にもつながるが、「情報取得自体を楽しむ」といった快楽的な態度の形成にも影響を与えていることが原因だと考えられる。
広告への態度においても、媒体への態度と同様、功利的態度と快楽的態度の二つ構造が確認された(図表7)。広告を接することによって得られる多様な商品情報の取得は、広告への評価とイメージの中心的な構成要素であり、購入態度形成につながっていると考えられる。さらに興味深いことは、快楽的態度において「わくわく感」「楽しい」という項目が「商品購入後に購入した商品の広告が気になる」「購入した商品の広告を見ると嬉しい」といった質問から得られた項目だということである。消費者が自分の選択の妥当性を、広告を通じて確かめるということは、消費者の中で広告が価値表現の対象として意味付けられていると考えられる。また消費者にとって広告を媒介にした情報探索(「話題探し」)は快楽であり、情報取得(「商品情報入手」)は功利だといった関係が確認できたことである。

 

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*GFI : 0.981, AGFI : 0.963, CFI : 0.982, RMSEA : 0.057, AIC : 114.802
**カイ二乗 : 78.802, 自由度 : 18,
***係数はすべて5%水準で有意

楽しく探して理性的に判断するといった複雑な態度構造が明らかになったといえる。ここでもう一歩探っていけば、広告に接することで商品情報が簡単に入り、購買までの意思決定時間が短縮できた「利便性」のような功利的態度もあり、商品情報入手による「知識蓄積」といった功利的態度もあり得る。また、快楽的態度のほうも媒体同様「気晴らし・息抜き」「刺激」といった要因でさらに説明できる。ここで、広告への態度においても2段階のモデルを試みたが、モデルの適合度指標(GFI : 0.746, AGFI : 0.649, CFI : 0.442, RMSEA : 0.235, AIC : 1159.802)が受容できる水準でなかったため、想定した態度構造はモデルとして確認できなかった。この理由としては、調査において具体的な広告表現が示されなかったことが考えられる。
こうした媒体と広告への態度における快楽/功利の構造の存在は、前述したように、個別広告への態度形成(Aad)と、広告接触に密接な関係を持つ媒体への態度形成要因から影響を受けているといった仮説(図表4参照)をもとに、それぞれの構造解明に踏み込んだ。今回のモデルの構築には、媒体への態度の構造モデル2(図表6)と広告への態度の構造モデルを用いモデル検証を行った(図表8)。その結果、想定した態度の関係が確認できた。モデルの適合度から見てみるとGFIをはじめ、適合度を表す数値が満足できる水準ではなかったものの、モデル自体は受容できると考えられた。

 

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*GFI : 0.912, AGFI : 0.878, CFI : 0.873, RMSEA : 0.087, AIC : 939.533
**カイ二乗 : 863.533, 自由度 : 98,
***係数はすべて5%水準で有意

 媒体への快楽的態度が功利的態度より、広告への態度により強く影響していることが分かった。これはそれぞれの態度の特性から起因した影響だと考えられる。
つまり、功利的態度の形成は媒体接触に明確な目的があって媒体に接するため、その目的が達成できれば、接触をやめたり、それ以上の情報処理は行わないことが考えられる。一方、快楽的態度は媒体に接触することが「楽しむ」という態度形成の源泉であるため、当該媒体に流れた広告にも一定の態度が形成されていることが確認できた。「媒体への態度→広告への態度」といった影響関係の検証は、これまで広告に関わる態度研究において別々のプロセスでなされた研究テーマを統合したことと、態度研究の枠組みを拡大したことになる。

6.結びにかえて
 本研究の成果は、Aad や消費研究における成果を媒体に持ち込んだことで、これまでにあまり見られることのなかった媒体への態度を構造モデルによって示し、広告全般への態度との関係を明らかにした。広告に関わる態度は、それぞれの領域でブラック・ボックスを取り除く作業が行われていたが、本研究はそれらを結びつけるための手がかりを提供できたのではないだろうか。
 功利と快楽の視点からは、媒体への態度と媒体に掲載される広告への態度が直線的ではないことが明らかにされた。実務では当たり前のことかもしれないが、媒体にあった内容でなければ、広告への好ましい接触や評価は期待できないということである。媒体の態度を構造的に把握できれば、広告される商品・ブランドとの親和性が高い媒体選択の手がかりが提供される。また、広告全般への態度との関係を明らかにすることにより、広告の受容性を考慮した媒体選択も可能になる。
 今回の研究は、媒体への態度を考える上でのパイロット・スタディーであり、課題も多く残されている。まず、調査設計の問題である。今回は、6つの媒体を調査対象にしたが、複数の媒体を対象にするには限界がある。また、態度の構造を複雑にとらえようとした場合、質問調査の項目には大きな制約がある。その意味では、今回の構造をどのようにすれば、単純化できるのかといった精緻化も必要である。媒体への態度から、広告全般への態度、Aadへの流れを検証するためには、調査の設計自体を考えなければならないだろう。
 次に、実務との関わりでの問題がある。多数のメディアやビークルをどのように扱うのか、ターゲット・オーディエンスの属性による態度の違い、媒体コンテンツと態度との関わり、媒体環境の違いと態度との関係といった部分についても今後の課題といえる。

主要参考文献
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広瀬盛一、朴亨烈、Sobrin Laura(2005)「消費状況に基づいた広告への態度について-快楽主義と実利主義尺度の適応可能性-」『吉田秀雄記念事業財団 第38次 助成研究報告書』吉田秀雄記念事業財団。
Chandon, Pierre, Brian Wansink, and Gilles Laurent(1999), Hedonic and Utilitarian Consumer Benefits of Sales Promotions, Marketing Science Institute Working Paper, Report No.99-109.
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Dobos, Jean and John Dimmick (1988), "Factor Analysis and Gratification Constructs," Journal of Broadcasting & Electronic Media, Vol. 32, Iss. 3, pp. 335-350.
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Holbert, Lance R. and Michael T. Stephenson (2003), "The Importance of Indirect Effects in Media Effects Research: Testing for Mediation in Structural Equation Modeling," Journal of Broadcasting & Electronic Media, Vol. 47, Iss. 4, pp. 556-572.
Holbrook, Morris B. and Rajeev Batra (1987), "Assessing the Role of Emotions as Mediators of Consumer Responses to Advertising," Journal of Consumer Research, Vol. 14, Iss. 3, pp. 404-420. Lutz, Richard J. (1985), "Affective and Cognitive Anteciedents of Attitude Toward the Ad: A Conceptual Framework," in Psychological Processes and Advertising Effects, L. F. Alwitt and A. A. Michel, eds, Lawrence Erlbaum Associates, pp. 45-64.
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Schults, Don E. and Beth E. Barnes(1999), Strategic Brand Communication Campaigns, Fifth ed., NTC Business Books.
Shavitt, Sharon, Pamela Lowrey, and James Haefner (1998), "Public Attitudes Toward      Advertising : More Favorable Than You Might Think," Journal of Advertising Research, pp. 7-22.
Swanson, David L. (1987), "Gratification Seeking, Media Exposure, and Audience        Interpretations: Some Distinctions for Research," Journal of Broadcasting & Electronic Media, Vol. 31, Iss. 3, pp. 237-254.
Vakaratsas, Demetorios and Tim Ambler (1999), "How Advertising Works: What Do We Really Know?,"(広瀬盛一訳「広告はどのように機能しているのか-私たちが本当に知っていることは何なのか-」マーケティングジャーナル 76号 日本マーケティング協会 pp. 24-33) Journal of Marketing, Vol. 63, pp. 26-43.

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