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2014年3月号:メディア業界の疑問を分析…第一弾「Aタイムシェア」の意義

いつもSPIニュースを御購読頂きまして誠にありがとうございます。

2014年のSPIニュースでは、広告/メディア業界で日々我々が感じる“疑問点”や“常識とされている事”の中で、 実はデータ分析による裏付けがなされていなかったり、論理構成が曖昧だったりする事について、
* 「メディア業界の疑問を分析」
と題して、
簡易的にではありますが、SPIの知見/databaseを活用して分析を行い、真実へのヒントを見付けだして行きたいと考えています。

第一弾となる今回は、スポットCM使用時に一指標とされる「Aタイムシェア」について、分析を行いました。

* Aタイムシェアとは?
スポットCMは、提供番組CMとは異なり、指定したポジションでのCM放映は難しく、様々な時間帯にCM放映=線引きされます。
その際、“タイムランク”という概念の元、「Aタイム」へのCM放映=線引き、を重要視する風潮があります。
Aタイムとは、下記図赤字時間帯、俗に言う“プライムタイム”の事を指します。

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* タイムランク、登場の経緯
テレビCMが登場/販売開始した時代は、“視聴率”が調査されておらず、取引単位は“本数ベース=本数単価”、 つまりCM1本xx円、という取引でした。
従って、「多くの人が見ている=視聴率が高いと想定される」タイムランクは高価格単価となり、Aタイムが最も高額時間帯、とされたのです。
広告主としては、1本単価は高くても、より多くの視聴者にCM到達できるので、高額でもAタイムのスポットCMは需要が発生しました。

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* Aタイムシェア、視聴率=GRP取引における、矛盾
しかし現在は、スポットCMは「世帯視聴率≒世帯GRP」による取引が一般的で、そうなると“Aタイム”を重視する必要性には疑問が出てきます。
つまり、世帯視聴率1%(=1世帯GRP)=xx円、での取引である為、例えばAタイム=視聴率20%→20%分の料金を支払う事になり、 逆に視聴率が低ければ料金支払いも少なく、従って「獲得世帯視聴率合計&世帯GRP単価」は変わらないからです。

1.個人視聴率/含有率の観点は?
売買は世帯視聴率(何世帯がTVを見ているか)でも、見る人数=個人視聴率(何人テレビを見ているか)、 では、“多くの人が同じテレビを見ている”Aタイムに価値がある、という議論があります。
下グラフは、ビデオリサーチ社(以下VR)のデータですが、確かにAタイム時間帯が多くを占める18~24時は、 “個人全体含有率”が他時間帯より高くなっており、 多くの人にCMを届けるという観点で「世帯GRPのAタイムシェア」は価値があると言えます。

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但し上記目的については“Aタイムシェア以外の指標”でも測定可能です。
もし
●同じ“世帯GRP”にて、より多くの人にCMを届ける
のが目的であれば、使用すべき指標はAタイムシェアでは無く、
◎ 個人全体含有率(vs世帯GRP、上グラフ内ピンク棒グラフ)
がより適切です。

従って、当該目的達成には、Aタイムシェアは“中間指標”であると言えるでしょう。

2.リーチ拡大の観点では?
GRPは「視聴率の足し上げ」であり、同GRPでも実際の接触人数は異なる場合があります。
例:2GRP=1%+1%
  …百人のうちの一人=1%が、二回見た
  …百人のうちの二人=2%が、一回ずつ見た
従って、低視聴率時間帯だと“少ない人が何回も見る”事になるが、高視聴率Aタイムだと“多くの人が一回ずつ見る”可能性が高くなるので、 Aタイムシェアは重要だ、という議論です。
しかしこれにも疑問があり、同じAタイムでも局時間曜日により視聴率差があり、またAタイムシェアが高ければその分“Aタイム以外時間帯でテレビを見る人”にはCM到達ができません。
簡単に言うと、その場合追うべき指標は“ターゲットリーチ(何%の人にCM到達したか)”にすべきです。
従って、当該目的達成には、Aタイムシェアというよりは“各タイムランク別シェアの(リーチに)必要なバランス”を中間指標として使用する、のが適切だと考えられます。

* では、Aタイム自体の価値/測定意義はどこにある?
SPIでは、過去経験と分析結果により、下記2つの観点で、“AタイムゾーンへのCM挿入”には価値があると考えています。

3.Aタイムでは「テレビCM到達の“質”が高い=より視聴者がしっかりCMを見る」
ビデオリサーチ社の視聴率調査は“機械式”で、テレビオンオフによる視聴率判定であり、テレビオンでも実際に見ていない、 もしくは、ながら視聴の可能性、があります。
そこで弊社SPIでは、SPI独自の「アンケート式での」視聴率調査による分析(SPI保有“CCS”使用)を行い、“視聴者が実際にテレビを見ていたと感じている/記憶している”ベースでの視聴率を元に、分析を行いました。

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上記グラフを見ると、SPI調査=アンケート式調査では“Aタイムランクが多くを占める「18~24時の個人視聴率」”が、 VRの機械式での個人視聴率と比べ、大きく上昇している事が明らかになりました。
結果として、個人含有率の観点でも、“実際にテレビを見ていた人=SPI調査(アンケート式からの回答)”は、 “Aタイムランクが多くを占める「18~24時」”が他時間帯から大幅上昇しています。
前段で述べた通り、
VR機械式調査は“ながら視聴”“テレビオンだが実際はあまり見ていない”視聴率もカウントされる可能性があり、
「アンケート式での」視聴率調査では“視聴者が実際にテレビを見ていたと感じている/記憶している” ベースの視聴率がカウントされる、
と仮定すると、
Aタイムでは「他時間帯よりも、テレビCM到達の“質”が高い=より視聴者がしっかりCMを見る」
という事が読み取れ、Aタイムシェアは「テレビCMを視聴者にしっかり見てもらう」という観点で重要な指標である、と言えると考えられます。

今回簡易分析による推測ではありますが、上記3観点を纏めますと、Aタイムの価値は、下記の通りと考えられます。

    (1)個人視聴率/含有率が高く、同世帯GRPでより多く幅広い層にリーチできる
    (2)従って同世帯GRPで個人リーチを拡大できる
    …但し想定ターゲット層によってはAタイムでの含有率(vs.世帯)が低く逆効果の可能性
    …Aタイム時間帯未視聴層もいる為、バランスが大切
    (3)実際に“テレビを見た”と認識している「視聴専念者」が多く、「テレビCMを視聴者にしっかり見てもらう」観点で価値が高い

    勿論、狙うべきターゲットにより、そもそもどこまでAタイムに拘るかは判断が分かれる所ではありますので、 実務の際は注意が必要です。

    いかがでしたでしょうか。
    次回以降も引き続き、広告/メディア業界で日々我々が感じる“疑問点”や“常識とされている事”について、掘り下げて分析を行っていく予定です。

    文責:渡辺あゆみ(PR主任)&小久江士郎(シニアコンサルタント)

より詳細な情報をお求めの方は、spiindex@spi-consultants.netまでご連絡下さい。

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