SPI NEWS

2014年7月号:メディア業界の疑問を分析…第二弾「PTシェア」の意義

いつもSPIニュースを御購読頂きまして誠にありがとうございます。

2014年のSPIニュースでは、広告/メディア業界で日々我々が感じる“疑問点”や“常識とされている事”の中で、実はデータ分析による裏付けがなされていなかったり、 論理構成が曖昧だったりする事について、
*「メディア業界の疑問を分析」
と題して、
簡易的にではありますが、SPIの知見/databaseを活用して分析を行い、真実へのヒントを見付けだして行きたいと考えています。

第二弾となる今回は、スポットCM使用時に一指標とされる「PTシェア=“PTスポットCMの全体に占める割合”」について、分析を行いました。

*PTとは?
スポットCMは、提供番組CMとは異なり、指定したポジションでのCM放映は難しく、様々な時間帯にCM放映=線引きされます。
その際、番組内で放映されるCM=PT(=Participation)、番組と番組の間で放映されるCM=SB(=Station-Break)、の2つが存在します。
下表がその概念/説明表です。

0053-1.png

*PTシェアの重要性
PTシェアは、何故重要なのでしょうか?
この議論では一般的に、視聴者行動観点での指摘、つまり「番組と番組の間は、視聴者がチャンネルをくるくる変えるので、 “ザッピング”に巻き込まれる為、視聴率が落ちる」という事が挙げられます。
実際に、CM1本当たりの視聴率を調べてみると、やはりPTはSBより高く、「SBはPTより視聴率が落ちる」と言えます。

0053-2.png

但し、上記議論のポイントとしては、スポットCMは“予定(=見込み)視聴率、で購入する”のが通常であり、従って「SBは予定視聴率も低いから、 実績視聴率が低くても、そもそも低い視聴率を前提に購入しているので、問題は無い」という指摘もなされるでしょう。
つまり、達成率=「予定(見込み)視聴率vs実績視聴率」の観点では、PTとSBに差は無い、という指摘です。
ですので、本当の意味で「PTは重要だ」と言うのであれば、
PTスポットは、SBスポットよりも達成率が高い、
という事でなければなりません。

*PTは、SBよりも達成率が高いのか?
弊社は日本最大手のメディアオーディット(広告購買監査)会社であり、数多くの広告主の「テレビスポットCM購買」について、価格・質、両面での分析評価を行ってきました。
そこで今回、今迄の弊社テレビスポットオーディット実績からなるdatapoolを用いて、簡易的に、PTvsSBの世帯GRP達成率比較を行いました。
すると、達成率ベースで見ても、PTの方がSBよりも高いという結果が導かれました。

0053-3.png

*何故、PTはSBよりも達成率が高いのか?
予定視聴率付帯ルールでは、基本的にPTは番組平均の、SBは番組終了1分前の、それぞれ予定視聴率を参照しており、その観点ではそれぞれに対して適切な予定視聴率が付帯されている、と考えても良さそうです。
しかし、何故、PTはSBよりも達成率が高い、逆に言うとSBは達成率が低くなってしまうのでしょうか。
考えられる理由は2つです。

(1)予定放映時間からの移動率の違い
スポットCMは、予定時間通りに流れるとは限らず、前or後ろへ移動させられる事があります。
ポイントは、予定視聴率は「予定放映時間枠」ベースに付帯され、移動後時間枠ベースでは無い、という事です。つまり、移動するという事は、想定外の時間帯=視聴率である場所で放映されるという事なのです。
上記状況が起こると、予定通りの実績視聴率獲得は困難になり、そしてその「移動」の多くが“ゴールデンタイム等需要の多い時間”からの後ろ倒しの為、結果として「より視聴率の低い時間帯or番組枠」でのCM放映が増えてしまいます。
そして、SBはPTよりも「予定枠から移動させられてしまう可能性が高い」という調査結果が出ています(弊社datapoolより)。

0053-4.png

(2)予定視聴率付帯ルール、「枠ズレによる異常な予定視聴率」の影響
予定視聴率付帯ルール、は前途の通りですが、これはあくまで基本ルールであり、例外が存在します。
それは、「実際の放映番組枠」が、「予定視聴率参照週(過去週)」に存在しない、場合です。

0053-5.png

この「異常な予定視聴率付帯」が起きると、当然“予定通りの実績視聴率は取り難い”となります。
では、そのような状況で「異常な予定視聴率付帯」の確率を調べると、ここでもSBが不利である事が解ります(弊社datapoolより)。

0053-6.png

従いまして、上記分析から見るに、より高い「実績視聴率(≒達成率vs予定)」を獲得する為にも、PTシェア確保は重要である、と言う事ができるでしょう。

*「高い達成率獲得」以外でのPTの優位点は考えられるか?
ここでは定性的な分析にとどまりますが、下記のPT優位点(=SB不利点)を挙げる事ができると考えられます。

  • SBは(前途の通り)ザッピングに巻き込まれながら放映されるので、そもそも視聴態度として好ましくない=CMを落ち着いて見ない環境、で放映される。
  • 達成率において、高いだけで無く、安定した結果(=予定通りの実績)を確保する為にも、「異常な予定視聴率付帯」の確率が低いPTが有利である。

いかがでしたでしょうか。
本分析を通じて、スポットCM放映時は、PTシェア確保が、一つの重要な指標であるという事がお解り頂けたかと思います。

但し、実務/実メディア購買時においては、PTシェア確保は「一要素」である事を忘れてはなりません。
PTシェアに拘るあまり、号数選定・線引き・サービス獲得が不利になり結果として実績視聴率/達成率がダウンする、等のマイナス要因が発生しては、全く意味が無いからです。

メディア/広告購買、メディアプラン、全てにおいて重要なのは「トータルパフォーマンス」です。
前回御紹介しました、Aタイムシェアもそうですが、トータルパフォーマンスを引き上げる為には、どの要素を“どれくらいまで改善するべきなのか/維持すべきなのか/下げてもOKなのか”を正しく理解し、継続的モニタリングの上管理していく事が重要となります。

次回以降も引き続き、広告/メディア業界で日々我々が感じる“疑問点”や“常識とされている事”について、掘り下げて分析を行っていく予定です。

文責:渡辺あゆみ(PR主任)&小久江士郎(シニアコンサルタント)

より詳細な情報をお求めの方は、spiindex@spi-consultants.netまでご連絡下さい。

<本レポートの引用・転載・使用に関する注意事項>

  • 掲載レポートは当社の著作物であり、著作権法により保護されております。 本リリースの引用・転載時には、必ず当社クレジットを明記いただけますようお願い申し上げます。
    (例:デロイト トーマツ エスピーアイ株式会社の分析によると…)
  • 記載情報については、弊社による現時点での分析結果・意見であり、こちらを参考にしてのいかなる活動に関しても法的責任を負う事はできません。
一覧ページへ戻る